『週刊SPA!』2018年12月25日号の「ヤレる女子大学生RANKING」に反対署名が多数/ 批判されるべきは『週刊SPA!』編集部だけなのか?

エグゼクティブ・サマリー

  1. 扶桑社『週刊SPA!』に掲載された「ヤレる女子大学生RANKING」にChange.orgで反対署名が殺到している。
  2. このような記事が生まれる背景として、「性的経験値が高い男性ほど偉い」「性的経験値が低い/ない男性への迫害が許される」風潮の存在が指摘できる。
  3. 再発防止のためには『週刊SPA!』編集部に対する批判以上に、男性に性的経験値を欲求し続け、ともすれば迫害しかねない日本社会全体の再考が求められる。

はじめに

扶桑社『週刊SPA!』2018年12月25日号「ヤレる女子大学生RANKING」

扶桑社が発行する『週刊SPA!』2018年12月25日号の「ヤレるギャラ飲み実況中継」という特集で、「ヤレる女子大学生RANKING」と題したランキングが掲載され、「女性蔑視」などとして批判の声が上がっていました。

www.asahi.com

この記事では「ヤれる女子大学生」が通う大学として、実践女子大学大妻女子大学フェリス女学院大学、法政大学、中央大学の名前が挙げられていました。

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「ヤレる女子大学生RANKING」(『週刊SPA!』2018年12月25日号より引用)
Change.orgで集まる反対署名

この記事に対して、インターネット上の署名サイト「Change.org」では既に2万7,000件を超える署名が寄せられています。

www.change.org

 

確かに、このような記事は許されません。女性蔑視であることはもとより、このランキングに記載されている大学に通う女性へのセクシャルハラスメントや暴行を助長しかねません。もし私がここに載せられている大学の女子大生だったら、相当に気分を害していたことは間違いありません。
また、個人的な事情としてこれらの大学に通う友人も多いことから、この特集には強い憤りを禁じ得ません。

 

しかし、この記事や発行元(『週刊SPA!』編集部)を批判するだけで問題は解決するのでしょうか。記事や発行元への批判は表面的な「対処療法」に過ぎません。そして対処療法だけで済ませる限り、第二・第三の「ヤレる女子大学生RANKING」が登場してまた物議を醸すのは時間の問題のように思えてなりません。

日本社会が同じ過ちを繰り返さないためには、このような特集や雑誌にニーズが生じてしまう社会的要因も改めて考える必要があります。

このような記事が生まれてしまう背景を考える

男性の「性的経験値」に対する社会的圧力

このような記事が生まれる背景として、まずは男性が「ヤレる女子大学生」、つまり「性行為に及びやすい相手」を求める理由を再考せねばなりません。男性が「性行為に及びやすい相手」を求めるのは単に性的欲求だけなのでしょうか。もちろん、性行為は本来的に性的欲求や生殖本能に基づくものでしょうが、現代日本社会においては「性的経験値(経験人数や回数)が低いことで迫害を受けたくない」という、一種の脅迫めいた社会的要因も、確かに存在しています。

男性は性的経験値が高ければ賞賛を受ける一方、逆にそれらが低いと卑下されたり人格否定をされたりしてしまう(例:童貞いじり)現状があります。しかも、その性的経験値が低い男性への迫害は社会的に容認されてすらいます。
「性的経験値が低い男性は迫害される」「迫害を受けたとしても誰も助けてくれない」とすれば、男性が性的経験値を高め(て迫害を避け)るために「性行為に及びやすい相手」を求めるのも(倫理的に許されるかはともかく)(共感はできないとしても)理解はできるでしょう。

www.bengo4.com

社会的圧力を形成するのは男性に限らない

しかも、その迫害に参加しているのは男性に限りません。かつてマーケターのはあちゅう氏が過去の「童貞いじり」で問題となったように、男性に性的経験値の向上を強いているのは男性のみならず、女性もまた同様であるということです。

sirabee.com

したがって、本来的に批判するべきはこの特集を掲載した週刊誌の編集部でもなく、こんな雑誌を購入する男性でもなく、男性に対して性的経験値を高めるように強いる社会そのものなのではないでしょうか。

 

誰にこの記事を批判する資格があるのか

つまり、本来的にこの特集に石を投げて良いのは、今までの人生で一度も「童貞」や「モテない男性」を侮辱したことのない人でしょう。性的経験値の低い男性への「迫害」によって男性が「性行為に及びやすい相手」を探さざるを得ない要因を形成しておいて、いざ男性が「性行為に及びやすい相手」を探そうとすると騒ぎ立てるのは矛盾しています。

もちろん、今まで性的経験値の低い男性を迫害したからといって、その迫害の加害者が(男女を問わず)セクシャルハラスメントや性的暴行の被害を受けて良い理由にはなりません。しかし、このような「ヤレる女子大学生RANKING」に対するニーズを、間接的であっても醸成したのは「男性に対する性的経験値の要求」であり、その要求が男性に「性的経験値を向上させる」インセンティブを形成していることも確かでしょう。

記事を批判する前に、まずは自省を

もし、この「ヤレる女子大学生RANKING」を批判するのであれば、まずは「今まで性的経験値の低い男性に迫害をしてこなかったか」胸に手を当てて考えてみましょう。
そして、もし今まで性的経験値の低い男性を迫害しておきながらこの特集に憤りを感じるなら、まずは性的経験値の低い男性を追い詰め、男性が「性行為に及びやすい相手」を探さざるを得ないインセンティブを形成した自らを省みるべきではないでしょうか。

「性的経験値が低くても迫害を受けない」、あるいは「性的経験値が高いからといって男性にとってステータスにならない」としたら、ここまで男性が「性行為に及びやすい相手」を探す必要はなく、このような低俗な記事に対するニーズは少なくとも今よりも低いと言えるでしょう。

まとめ

本質的な再発防止策の徹底が求められる

『週刊SPA!』2018年12月25日号に掲載された「ヤレる女子大学生RANKING」は到底許されるものではありません。しかし、表面的な批判だけでは画竜点睛を欠き、同じような記事の出現を防ぐことはできません。

日本社会に根付く「性的経験値が高い男性は偉い」「性的経験値が低い男性は迫害される」「性的経験値による不当な査定に対して男性は抗えない(抗いにくい)」という社会的ないし構造的要因が改善されない限り、男性は「性行為に及びやすい相手」を探す社会的圧力に晒され続けることになります。
もちろん、不当な圧力に晒されても男性に自制が求められることは言うまでもありませんが、本来であれば性的経験値によって個人が査定され、ともすれば迫害を受けるべきではないことも確かです。

再考を促されている日本社会

『週刊SPA!』編集部に反省が求められることは明らかですが、男性に性的経験値を要求し続け、さもなければ迫害しかねない日本社会全体も、再考を促されていると言えるのではないでしょうか。